なぜ片目ずつ手術するの? 白内障手術の順番や両目の間隔をわかりやすく解説
- 2026年7月16日
- 白内障

白内障手術はなぜ片目ずつ行うのか?
白内障手術を片目ずつ行う最大の理由は、万一の感染症リスクを片眼に留めるためです。手術後の眼内炎(術後眼内炎)は発生確率こそ約0.02%と非常に稀ですが、発症した場合は緊急処置が必要で、最悪の場合は失明に至る可能性があります。
本記事では、白内障手術を片目ずつ行う医学的根拠・手術間隔の目安・両眼同時手術との比較・自分に合った選び方まで、眼科専門医の立場からわかりやすく解説します。
白内障手術は約3mmの切開創から眼内レンズを挿入する「内眼手術」に分類されます。眼球内部で行う手術であるため、創口から細菌が侵入するリスクがゼロではありません。片眼ずつ手術することで、感染症が発生しても反対側の目が補助となり、日常生活を継続できます。
また、片眼の術後の見え方を確認してから、もう片方の眼内レンズの度数を微調整できる点も大きなメリットです。手術前にイメージしていた見え方と実際が異なった場合でも、もう片方のレンズ選定で対応できます。
幕張久木元眼科
白内障手術の進め方について知りたい方へ
片目ずつ手術する理由や順番、両目の間隔は、目の状態やご希望によって変わります。疑問は診察時にお気軽にご相談ください。

白内障手術の間隔はどのくらいが標準か?
両眼の白内障手術を行う場合、手術間隔は1週間前後が一般的な標準です。ただし患者さんの状態や希望によって数日〜2週間と幅があります。
かつて1週間の間隔が設けられていた理由は、術後すぐは強い炎症や角膜浮腫が生じて視力が安定しないためです。1週間ほど経過すると感染リスクが低下し、炎症が落ち着いて視力が出やすくなるため、そのタイミングで反対側の手術を行うのが安全とされてきました。
現在は手術手技の向上・手術時間の短縮・傷口の最小化・手術室の無菌管理の向上により、術後翌日から視力が回復するケースが増えています。そのため施設によっては中1日・同日(両眼同日手術)という選択肢も提示されるようになっています。
- 1週間間隔:最も一般的。感染リスクが低下してから手術するため安全性が高い。
- 中1日〜数日間隔:患者さんの負担軽減を重視する施設で採用。
- 同日(両眼同日手術):近年増加傾向。適応基準を満たした場合に選択可能。
術後眼内炎とはどのようなリスクか?
術後眼内炎は、白内障手術後に眼球内部で細菌感染が起こる合併症です。発生確率は約0.02%と非常に稀ですが、発症すると緊急の硝子体手術などが必要になります。
片眼ずつ手術することで、万一眼内炎が発生しても感染を片眼のみに留めることができ、もう片方の目で視機能を維持できます。これが片眼ずつ手術する最も重要な医学的根拠です。
両眼同日手術の場合でも、左右で別々の器具(ディスポーザブル)を使用し、適切な消毒・滅菌を行えば感染リスクはほぼ同等に抑えられます。ただし万一両眼同時に感染が起きた場合のリスクは大きいため、適応基準の厳格な確認が必要です。

両眼同時手術と片目ずつ手術の違いは何か?
両眼同時手術(ISBCS)と片眼ずつの手術(DSBCS)は、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらが優れているかは患者さんの状態・生活環境・希望によって異なります。
2023年5月にLancet誌に掲載されたオランダ・マーストリヒト大学医療センターによる多施設共同無作為化試験(BICAT-NL試験)では、865例を対象に両眼同時手術と片眼ずつ手術を比較しました。結果として有効性は非劣性、安全性は同等、費用対効果は両眼同時手術が優れることが示されています。
以下に両者の主な違いをまとめます。
- 感染リスク:片眼ずつ手術の方が万一の際のリスクを片眼に限定できる。両眼同時でも適切な管理下では同等レベルに抑制可能。
- 眼内レンズの再調整:片眼ずつなら片方の術後の見え方を確認してから、もう片方のレンズを微調整できる。両眼同時では再調整の機会がない。
- 日常生活への復帰:両眼同時手術は術後制限期間が1回で済むため早期復帰が可能。片眼ずつでは制限期間が2回分発生する。
- 左右の見え方のバランス:両眼同時手術は手術直後から左右のバランスが取りやすい。片眼ずつでは手術と手術の間に「不同視」が生じる場合がある。
- 通院・費用負担:両眼同時手術は術後通院が1セットで済み、交通費・検診費の負担が少ない。
- 手術当日の付き添い:両眼同時手術は当日両眼ともぼんやりするため、必ず付き添いが必要。片眼ずつなら付き添いなしで帰宅できる場合もある。
片目ずつ手術する場合の手術の流れはどうなるか?
片眼ずつ手術する場合、通常は白内障が進んでいる方(見えにくい方)の目から先に手術します。その後、1週間前後の間隔を空けてもう片方の手術を行います。
- 術前検査:眼軸長・角膜曲率・眼圧などを測定し、眼内レンズの度数を決定する。
- 第1眼の手術:白内障が強い方の目を先に手術。日帰りで実施するクリニックが多い。
- 術後経過観察:術翌日・数日後・1週間後などに受診し、視力・眼圧・炎症の状態を確認する。
- 第2眼の手術:第1眼の状態が安定したことを確認してから、もう片方の手術を実施。
- 術後管理:両眼の手術後も定期的な経過観察を継続する。
第1眼の術後の見え方を確認することで、第2眼の眼内レンズの度数や種類を微調整できるのが片眼ずつ手術の大きなメリットです。特に多焦点眼内レンズや乱視矯正レンズを選ぶ場合は、この微調整が仕上がりの満足度に直結します。
両眼同時手術が向いている人・向いていない人は?
両眼同時手術は全員に適しているわけではありません。適応基準を満たした場合にのみ選択できる手術方法です。
以下に向いている人・向いていない人の目安をまとめます。
- 両眼同時手術が向いている人:
- 両眼の白内障の進行度がほぼ同程度の方
- 高齢・身体的制約があり通院が難しい方
- 強度近視・強度遠視で片眼手術後の「不同視」が生活に支障をきたす方
- 仕事・生活の都合で術後制限期間を1回にまとめたい方
- 術後の見え方(ピント)についてはっきりした希望がある方
- 両眼同時手術が向いていない(適用されない可能性がある)人:
- 左右の白内障の進行度に大きな差がある方
- 緑内障・網膜疾患など他の眼疾患を合併している方
- 眼内炎や術後屈折誤差のリスクが高いと判断された方
- 手術当日に付き添いを確保できない方
- 左右でレンズの種類・度数を調整して見え方の幅を広げたい方

眼内レンズの種類と片目ずつ手術の関係は?
眼内レンズの選択は、片眼ずつ手術するか両眼同時手術にするかの判断にも影響します。多焦点眼内レンズや乱視矯正レンズを選ぶ場合は、片眼ずつ手術の方が微調整の機会を確保できるため有利です。
単焦点レンズは遠方・中間・近方のいずれか1点にピントを合わせるレンズです。一方、多焦点眼内レンズは近方・中間・遠方の複数の距離にピントを合わせられるため、術後の生活の質が大きく向上します。
幕張久木元眼科では、東京医科歯科大学病院白内障・屈折矯正外来元主任の院長が、患者さんの希望・ライフスタイルに合わせた眼内レンズを提案しています。保険適用の分節型2焦点レンズ(約70cmから遠方まで焦点)から3焦点眼内レンズ・乱視矯正レンズまで複数の選択肢を用意しており、レンズの色による見え方の違いも考慮した丁寧な説明が特徴です。
- 単焦点レンズ:保険適用。遠方・中間・近方のいずれか1点にピントを合わせる。
- 分節型2焦点レンズ(保険適用):約70cmから遠方まで焦点が合う。保険適用で費用負担を抑えられる。
- 3焦点眼内レンズ:近方・中間・遠方の3点にピントが合い、日常生活でメガネが不要になることが多い。
- 乱視矯正レンズ(トーリックレンズ):白内障と乱視を同時に矯正できる。
手術の進め方も、ていねいにご説明します
当院では日帰り白内障手術に対応し、手術の順番や両目の間隔についても一人ひとりの状態に合わせてご提案します。
白内障手術後の生活制限と回復期間はどのくらいか?
白内障手術後は、感染予防のために一定期間の生活制限があります。洗顔・洗髪・入浴・運動・車の運転などに制限が設けられ、通常1〜2週間程度続きます。
片眼ずつ手術する場合、この生活制限期間が2回発生します。一方、両眼同時手術では1回で済むため、生活への影響を最小限に抑えられます。ただし両眼同時手術の当日は両眼ともぼんやりした状態になるため、必ず付き添いが必要です。
術後の視力回復については、手術翌日から視力が出始めるケースが多く、1〜3か月かけて安定していきます。眼内レンズの種類・術前の眼の状態・個人差によって回復のペースは異なります。気になる症状がある場合は、速やかに担当医に相談することが大切です。
白内障手術の方法・眼内レンズの選択・手術間隔について、専門医に相談したい方は幕張 久木元眼科へお気軽にご相談ください。東京医科歯科大学病院白内障・屈折矯正外来元主任の院長が、患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドの診療を提供しています。イオンモール幕張新都心グランドモール1階に位置し、土日祝日も診療・WEB予約対応・駐車場完備で通いやすい環境を整えています。
よくある質問
白内障手術は必ず片目ずつ行わなければなりませんか?
必ずしも片目ずつでなければならないわけではありません。適応基準を満たした場合は両眼同時手術も選択できます。ただし感染リスクの分散・眼内レンズの微調整などの観点から、片眼ずつが標準的な方法です。担当医と相談して決めましょう。
白内障手術の両目の間隔はどのくらい空けるのが一般的ですか?
一般的には1週間前後の間隔が標準です。患者さんの状態や希望により数日〜2週間と幅があります。施設によっては中1日や同日(両眼同日手術)も選択肢として提示されます。
片目だけ白内障手術を受けた後、もう片方はいつ手術しますか?
第1眼の術後の状態が安定したことを確認してから、通常1週間前後でもう片方の手術を行います。第1眼の見え方を確認してから眼内レンズの度数を微調整できるのが片眼ずつ手術のメリットです。
白内障手術後の生活制限はどのくらい続きますか?
洗顔・洗髪・入浴・運動・車の運転などの制限が通常1〜2週間程度続きます。片眼ずつ手術する場合はこの制限期間が2回発生します。担当医の指示に従って生活制限を守ることが感染予防に重要です。
両眼同時白内障手術のリスクは高いですか?
適切な管理下では安全性は片眼ずつと同等とされています。2023年5月のLancet誌掲載のBICAT-NL試験(865例)でも有効性・安全性ともに非劣性が確認されています。ただし万一の感染症が両眼に及ぶリスクがあるため、適応基準の確認が必要です。
多焦点眼内レンズを選ぶ場合、片目ずつ手術した方がよいですか?
多焦点眼内レンズや乱視矯正レンズを選ぶ場合は、片眼ずつ手術の方が第1眼の術後の見え方を確認してから第2眼のレンズを微調整できるため有利です。レンズ選択の満足度向上につながります。
白内障手術の片眼ずつの手術で保険は適用されますか?
白内障手術は健康保険が適用されます。単焦点レンズは保険適用で、多焦点眼内レンズは種類によって保険適用・自費の違いがあります。保険適用の分節型2焦点レンズも存在するため、担当医に確認しましょう。
白内障手術後、片目だけ手術した状態で日常生活に支障はありますか?
片眼手術後は左右の見え方に差が生じる「不同視」の状態になることがあります。特に強度近視・強度遠視の方はこの不同視が生活に支障をきたしやすいため、両眼同時手術や短い間隔での手術が推奨される場合があります。
白内障手術の手術間隔を短くすることはできますか?
施設の方針・患者さんの状態によっては数日〜中1日での手術も可能です。ただし第1眼の術後状態の確認が前提となります。希望がある場合は担当医に相談してください。
白内障手術は日帰りで受けられますか?
多くのクリニックで日帰り白内障手術が可能です。手術時間は10〜20分程度で、術後数時間の安静後に帰宅できます。幕張久木元眼科でも日帰り白内障手術に対応しています。
結論
白内障手術を片目ずつ行う主な理由は、術後眼内炎リスクの分散と眼内レンズの微調整機会の確保です。手術間隔は1週間前後が標準ですが、患者さんの状態・生活環境・レンズの種類によって最適な方法は異なります。多焦点眼内レンズや乱視矯正レンズを検討している場合は特に、経験豊富な専門医のもとで十分な説明を受けてから判断することをお勧めします。
幕張久木元眼科|日帰り白内障手術に対応
手術の進め方や術後の経過についてもわかりやすくご説明します。気になる点はお気軽にご相談ください。土・日・祝日も診療しています。
千葉県千葉市美浜区豊砂1-1 イオンモール幕張新都心グランドモール1階/休診日:火曜
著者情報
幕張久⽊元眼科 院⻑ 久⽊元延⾏

経歴
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白内障・屈折矯正外来 主任
– 糖尿病網膜症専門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院
【資格】
日本眼科学会認定眼科専門医
水晶体嚢拡張リング認定医
難病指定医
ボトックス認定医(眼瞼痙攣、斜視)
光線力学療法認定医
【所属学会】
日本眼科学会
日本眼手術学会
日本白内障屈折矯正学会
日本網膜硝子体学会
日本糖尿病眼学会


