飛蚊症はスマホが原因?増えたと感じる理由と注意点を解説
- 2026年1月16日
- 白内障
視界に黒い点や糸くずのようなものが浮かんで見える「飛蚊症」・・・スマートフォンを長時間使用している方の中には、この症状を経験したことがある方も多いのではないでしょうか。
明るい画面を見ているとき、ふと気づく黒い影。目を動かすと一緒についてくるこの浮遊物に、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
近年、若い世代でも飛蚊症を訴える方が増えており、その背景にはデジタルデバイスの長時間使用が関係していると考えられています。
本記事では、眼科医の視点から、飛蚊症とスマホの関係性、症状が増えたと感じる理由、そして注意すべき危険なサインについて詳しく解説します。
飛蚊症とは何か
飛蚊症とは、視界に黒い点や糸くず、虫のような浮遊物が見える症状です。
特に明るい場所や白い壁、青空を見たときに認識しやすく、視線を動かすと浮遊物も一緒に移動するという特徴があります。暗い場所では目立ちにくくなることも特徴の一つです。
この症状の正体は、眼球内部にある「硝子体」という透明なゼリー状の物質の濁りです。硝子体は眼球の約80%を占め、水分が98〜99%を占めています。残りの1〜2%にはコラーゲン線維やヒアルロン酸といった成分が含まれており、これらが変化することで飛蚊症が起こります。

飛蚊症の見え方
飛蚊症で見える影の形状はさまざまです。点状、糸状、蜘蛛の巣状、あるいは煙や雲のように見えることがあります。
リングや円形の影が見えるケースもあり、これらは硝子体内に浮遊する微細な物質や異常が影となって映し出されているためです。
見える影は視線を動かすとそれに合わせて動きますが、完全に視線に追随するわけではなく、少し遅れて動くように感じます。これは浮遊物が硝子体の中を漂っているためで、視線を動かした後に硝子体内で浮遊物がゆっくりと流れるように動くからです。
飛蚊症の主な原因
飛蚊症の原因は大きく分けて「生理的なもの」と「病的なもの」の2種類があります。
生理的飛蚊症は、加齢に伴う硝子体の変化によって起こります。硝子体は年齢とともに収縮して部分的に液体化し、小さな塊や繊維状の構造ができることがあります。これらの塊や繊維が影を作り、視界に浮かぶ点や線として認識されるのです。
このタイプの飛蚊症は特に40歳を過ぎた方に多く見られ、ほとんどの場合は心配する必要がありません。時間とともに慣れていくことが多いです。
一方、病的飛蚊症は網膜裂孔、網膜剥離、硝子体出血、ぶどう膜炎、糖尿病網膜症などの疾患が原因で起こります。これらは早急な治療が必要となるケースもあるため、注意が必要です。
スマホと飛蚊症の関係性
スマートフォンの長時間使用が飛蚊症を直接的に「引き起こす」わけではありません。
しかし、スマホ使用が飛蚊症の自覚症状を強めたり、目の疲労を通じて硝子体の状態に影響を与えたりする可能性が指摘されています。
目の疲労と眼圧変動
スマホやタブレットを長時間使用すると、瞬きの回数が通常の3分の1程度まで減少します。これにより目の乾燥が進み、眼精疲労を引き起こします。
目が疲れると毛様体筋の緊張が続き、眼圧の変動を生じさせることがあります。この眼圧変動が硝子体の状態に影響を与え、飛蚊症の自覚症状を強める可能性があるのです。
実際、1日7時間以上デジタル機器を使用している方は、3時間未満の方と比較して眼科受診率が約1.5倍高いというデータも報告されています。
ブルーライトの影響
スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、睡眠の質を下げるだけでなく、目の疲労回復を妨げます。
ブルーライトの長時間曝露は網膜に酸化ストレスを与え、飛蚊症の原因となる硝子体の早期老化を促進する可能性があると考えられています。
特に注意すべきは就寝前のスマホ使用です。暗い環境で明るい画面を見ることは、目に大きな負担をかけます。
若年層での飛蚊症増加
近年、20代から30代の若年層で飛蚊症を訴える方が増えています。
ある眼科の調査では、20代から30代の飛蚊症患者の約7割がデジタルデバイスの使用時間が1日6時間以上という結果が出ています。これは目の疲労が蓄積し、硝子体の変性を早める可能性を示唆しています。
若い方でも、ストレスや疲労で活性酸素が増えて硝子体が変質すると、飛蚊症を発症する場合があります。パソコンやスマートフォンから発するブルーライトは、硝子体内に活性酸素を発生させ、飛蚊症を引き起こす要因になると考えられています。
飛蚊症が増えたと感じる理由
「最近、飛蚊症が増えた気がする」と感じる方は少なくありません。
この感覚には、いくつかの理由が考えられます。
硝子体の液化(シネレシス)
加齢とともに硝子体は液化していきます。このプロセスを「シネレシス」と呼びます。
若い時期には均一だったコラーゲン線維が、時間の経過とともに一部凝集し、硝子体の大部分が液体化していきます。この過程で線維が束になり、飛蚊症として認識される影が増えていくのです。
シネレシスは段階的に進行するため、「急に増えた」と感じることもあります。特に中年期から高齢期にかけて、この変化が顕著になります。
後部硝子体剥離
加齢に伴い、硝子体が網膜から剥がれることがあります。これを「後部硝子体剥離」と呼びます。
後部硝子体剥離は比較的一般的で、多くの場合自然に起こります。この過程で硝子体が収縮し、網膜に接していた部分が剥がれると、視界に浮かぶような影が現れることがあります。
後部硝子体剥離が起こると、飛蚊症の症状が急に現れたり、視界に光が走る「光視症」を伴ったりすることがあります。
スマホ使用による自覚の増加
スマートフォンの明るい画面を長時間見ることで、もともと存在していた飛蚊症に気づきやすくなることがあります。
特に白い背景のウェブページやアプリを使用しているとき、飛蚊症の影がより目立って見えます。これは飛蚊症が実際に増えたわけではなく、明るい背景によって既存の影が認識しやすくなっただけの場合もあります。
注意すべき危険なサイン
飛蚊症の多くは生理的なもので心配する必要がありませんが、中には早急な治療が必要な病気のサインである場合があります。
以下のような症状が現れた場合は、できるだけ早く眼科を受診する必要があります。
急激な飛蚊症の増加
数日から数週間の間に、飛蚊症の数が急激に増えた場合は要注意です。
これは網膜裂孔や網膜剥離、硝子体出血などの可能性があります。特に「急に黒い点が大量に増えた」「墨を撒いたような影が見える」といった症状は、緊急性が高いサインです。
視界に閃光が走る(光視症)
視界に光が走る、チカチカとした光が見えるといった症状を「光視症」と呼びます。
光視症は網膜が引っ張られることで起こり、網膜裂孔や網膜剥離の前兆である可能性があります。特に暗い場所で光が見える場合は、早急な受診が必要です。
視野の欠損や視力低下
飛蚊症に加えて、視野の一部が欠ける、見えにくい部分がある、視力が急に低下したといった症状がある場合は、網膜剥離の可能性があります。
網膜剥離は放置すると失明に至る危険性があるため、これらの症状が現れた場合は、すぐに眼科を受診してください。
視界がかすむ・ぼやける
飛蚊症とともに視界全体がかすむ、ぼやけるといった症状がある場合は、硝子体出血やぶどう膜炎、糖尿病網膜症などの可能性があります。
これらの疾患も早期発見・早期治療が重要です。
飛蚊症の検査と診断
飛蚊症が気になる場合は、眼科での検査を受けることをおすすめします。
当院では、散瞳検査や眼底検査を通じて原因を正確に評価し、経過観察でよいものか、早急な治療が必要かを判断しています。
散瞳検査
散瞳検査では、瞳孔を広げる点眼薬を使用して、眼底の詳細な観察を行います。
この検査により、硝子体の状態、網膜の状態、網膜裂孔や網膜剥離の有無などを確認することができます。検査後は数時間、視界がぼやけたり、まぶしく感じたりすることがありますが、時間とともに回復します。
眼底検査
眼底検査では、網膜や視神経、血管の状態を詳しく観察します。
糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、網膜静脈閉塞症などの疾患の有無も確認できます。最近では、OCT(光干渉断層計)などの画像検査機器を用いることで、より詳細な診断が可能になっています。
診断結果に基づく対応
検査の結果、生理的飛蚊症と診断された場合は、基本的に経過観察となります。
一方、網膜裂孔が見つかった場合は、レーザー治療による日帰り治療を行います。網膜剥離など手術が必要と判断される場合には、速やかに連携医療機関へご紹介する体制を整えています。
飛蚊症の予防と対策
生理的飛蚊症を完全に予防することは難しいですが、目の健康を守り、症状の悪化を防ぐための対策はあります。
20-20-20ルールの実践
デジタルデバイスを使用する際は、「20-20-20ルール」を実践しましょう。
これは、20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るという方法です。眼科医も推奨するこの方法により、目の疲労を軽減し、毛様体筋の緊張をほぐすことができます。
スマホ使用環境の改善
スマートフォンの画面の明るさを適切に調整し、ブルーライトカットフィルターを使用することをおすすめします。
また、適切な姿勢と距離(30〜40cm)を保つことも重要です。暗い部屋や寝床での使用は避け、1〜2時間ごとに目を休めるようにしましょう。
生活習慣の改善
目の健康のためには、生活習慣の改善も大切です。

脂の多い肉などの高脂肪食を控え、野菜や魚を積極的に摂取しましょう。黄斑にはルテインやゼアキサンチンといった抗酸化物質が多く含まれており、これらの成分を含む食品を摂ることが目の健康につながります。
ルテインはホウレンソウ、ケール、小松菜などに、ゼアキサンチンはパプリカやトウモロコシなどに多く含まれています。
定期的な眼科検診
飛蚊症の症状がある方は、定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。
症状に変化がないか、新たな病気が隠れていないかを確認することで、早期発見・早期治療につながります。特に糖尿病や高血圧などの持病がある方、血縁者に眼疾患の患者がいる方は、定期的な検診が重要です。
まとめ
飛蚊症はスマートフォンが直接的な原因となるわけではありませんが、長時間使用による目の疲労や眼圧変動が症状を悪化させる可能性があります。
多くの飛蚊症は加齢による生理的な変化で、心配する必要はありません。しかし、急激な症状の増加、光視症、視野欠損などの危険なサインが現れた場合は、早急に眼科を受診する必要があります。
当院では、散瞳検査や眼底検査を通じて飛蚊症の原因を正確に評価し、経過観察でよいものか、治療が必要かを判断しています。レーザー治療による日帰り治療も可能で、手術が必要な場合は連携医療機関へ速やかにご紹介する体制を整えています。
日常生活では、20-20-20ルールの実践、スマホ使用環境の改善、バランスの取れた食事、定期的な眼科検診などを心がけることで、目の健康を守ることができます。
「念のため受診したい」という段階からでも、安心してご相談いただける体制を整えています。
目の症状は軽く感じられても、背景に疾患が隠れているケースも少なくありません。飛蚊症が気になる方は、お気軽に幕張久木元眼科へご相談ください。
将来の視機能を守るために、今できることから始めていきましょう。
著者情報
幕張久木元眼科 院長 久木元 延行

経歴
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白内障・屈折矯正外来 主任
– 糖尿病網膜症専門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院
資格
日本眼科学会認定眼科専門医
水晶体嚢拡張リング認定医
難病指定医
ボトックス認定医(眼瞼痙攣、斜視)
光線力学療法認定医
所属学会
日本眼科学会
日本眼手術学会
日本白内障屈折矯正学会
日本網膜硝子体学会
日本糖尿病眼学会


