白内障を悪化させる夏の紫外線|日常でできる3つの予防法
- 2025年11月19日
- 白内障

夏の紫外線が白内障を悪化させる仕組み
夏が近づくと気になるのが強い日差し。肌の日焼け対策はしていても、実は目の日焼け対策はおろそかになっていませんか?
紫外線は私たちの目、特に水晶体に大きなダメージを与えます。水晶体はカメラのレンズのような役割をしており、本来は透明な組織です。この水晶体が濁ってしまう病気が「白内障」です。
世界保健機構(WHO)によると、白内障の原因の約20%は紫外線によるものだとされています。紫外線は目のレンズの役割をする水晶体に吸収されて蓄積し、水晶体のたんぱく質が白く濁ってしまう原因となるのです。
特に注意したいのは、曇りの日です。あまりまぶしく感じられない曇りの日はまばたきの回数が少なくなり、多くの紫外線を吸収してしまいます。
私は眼科医として多くの白内障患者さんを診てきましたが、夏場に症状が進行したと感じる方は少なくありません。実際、紫外線量は近年増加傾向にあり、ジョンソン・エンド・ジョンソンと日本気象協会の共同調査によると、ここ数年で紫外線量が増えていると感じる人が過半数(51.2%)いることがわかっています。
では、この紫外線から目を守るために、私たちは日常生活でどのような対策ができるのでしょうか。
白内障と紫外線の関係性
白内障は加齢によって誰にでも起こりうる病気です。80代になるとほぼすべての人が発症するとされています。しかし、その進行速度には個人差があり、紫外線の影響が大きいことがわかっています。
白内障の発症メカニズムを簡単に説明しましょう。
水晶体に含まれるタンパク質は、紫外線によって酸化し性質が変化してしまいます。水晶体は光を集める働きをするため、紫外線によって活性酸素が発生することは避けられず、酸化障害を受けやすいのです。この酸化が進むと、水晶体が白く濁り、光がうまく通らなくなります。
紫外線による白内障の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 目がかすむ
- 視力の低下
- 光をまぶしく感じる
- ものが二重に見える
- 眼鏡が合わなくなる
- 目が疲れやすい
これらの症状に心当たりがある方は、早めに眼科を受診されることをお勧めします。
私の臨床経験からも、夏場の紫外線対策をしっかりしている患者さんは、白内障の進行が比較的緩やかな傾向があります。特に、若いうちから紫外線対策を意識している方は、高齢になってからの白内障の発症リスクを下げられる可能性があるのです。
では、具体的にどのような対策が効果的なのでしょうか?
日常でできる白内障予防法①:サングラスや帽子で紫外線をカット

白内障予防の第一歩は、目に入る紫外線の量を減らすことです。
最も効果的なのは、UV加工が施されたサングラスの着用です。サングラスを選ぶ際には「紫外線透過率」を確認しましょう。これは紫外線をカットする割合を示し、例えば「紫外線透過率1%」であれば紫外線の99%をカットできることになります。
ここで多くの方が誤解しているのが、レンズの色についてです。色が濃いからといって紫外線カット効果が高いとは限りません。むしろ、濃いレンズをかけると瞳孔が開くため、紫外線カットが十分でない場合はより多くの紫外線を吸収してしまう危険性があります。
サングラスを買う際は、必ず紫外線カットの表記を確認してから購入してください。
つばの広い帽子も効果的です。つばが広いほど、上からだけでなく地面や水面からの反射光も防ぐことができます。特に海や雪山など反射の強い場所では、サングラスと帽子の併用がおすすめです。
日傘も紫外線対策として有効です。最近では男性用の日傘も増えてきました。恥ずかしいと思わず、健康のために積極的に活用しましょう。
これらのアイテムは、晴れた日だけでなく曇りの日も使用することが大切です。実は曇りの日でも紫外線は降り注いでいます。むしろ曇りの日は目がまぶしくないため、まばたきの回数が減り、紫外線の影響を受けやすくなることもあるのです。
あなたは普段、どのような紫外線対策をしていますか?
日常でできる白内障予防法②:抗酸化作用のある食品摂取
紫外線から目を守る方法は、外部からの対策だけではありません。体の内側からのケアも重要です。
水晶体は、タンパク質の酸化により白く濁ってしまいます。この酸化による濁りを防ぐために、抗酸化作用のある食べ物を摂取する方法があります。
白内障の予防に効果があるとされている抗酸化物質には、以下のようなものがあります。
- ビタミンC:いちご、レモン、ブロッコリーなどの野菜や果物のほか、緑茶(せん茶)や焼きのりに多く含まれています。
- ベータカロチン・ルテイン:にんじん、ほうれん草、ピーマン、かぼちゃなどの緑黄色野菜から摂取できます。
- ゼアキサンチン:ほうれん草などの緑色野菜やオレンジジュース、とうもろこし、柿、ブロッコリーなどに多く含まれています。
これらの栄養素は、活性酸素から目を守る働きがあります。日々の食事で意識して取り入れることで、白内障の予防につながるでしょう。
私が患者さんによくお伝えしているのは、「色とりどりの食事を心がけてください」ということです。色の濃い野菜や果物には抗酸化物質が豊富に含まれていることが多いからです。
ただし、栄養素不足が病気の原因になりますが、過剰摂取も病気の原因になることがあります。サプリメントに頼る場合は、医師や栄養士に相談することをお勧めします。
また、糖化ストレスも白内障の原因になります。糖化ストレスは、血液中の糖とタンパク質が結合することで最終糖化産物(AGEs)という物質ができることで生じます。これは酸化ストレスにもなるため、血液中の糖が多いと白内障になりやすくなります。
糖尿病の患者さんは、そうでない方よりも白内障になりやすいのはそのためです。糖化ストレスを減らすためには、血液中の糖を減らすことが重要です。加糖の炭酸飲料や揚げ物、スナック菓子などは糖質を多く含むため、摂取量を控えめにすることをお勧めします。
日常でできる白内障予防法③:生活習慣の改善

白内障予防には、日々の生活習慣の見直しも効果的です。
まず挙げられるのが、禁煙です。タバコはさまざまな病気の原因になることが知られていますが、目の病気も例外ではありません。白内障や緑内障、加齢黄斑変性など、失明の原因として知られる目の病気にタバコの関連が指摘されています。
喫煙をすると、タバコに含まれるニコチンが毛細血管を収縮させ血流障害が起こります。また、煙の成分の一部はビタミンCを破壊し、タバコを1本吸うことで25~70mgものビタミンCが減少するといわれています。
次に、適度な運動も大切です。適度な運動は血行を促進し、酸化ストレスからも身を守ってくれるので、白内障の進行予防に役立ちます。特に、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動がおすすめです。
私の患者さんの中には、定期的なウォーキングを始めてから目の調子が良くなったという方もいらっしゃいます。全身の健康が目の健康にも繋がるのです。
最後に、定期的な眼科検診も忘れないでください。白内障は早期発見と適切な治療が重要です。症状がなくても、40歳を過ぎたら年に一度は眼科検診を受けることをお勧めします。
当院では、患者さん一人ひとりの目の状態に合わせた適切なアドバイスを行っています。少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
点眼薬による予防効果
白内障の進行を遅らせるために、点眼薬を使用する方法もあります。
白内障の予防、進行を抑制する目的で使用されている目薬として、白内障の起因となるキノイド物質の成長を抑え、水晶体が混濁化するのを防ぐ「ピレノキシン点眼液」、白内障の進行にともない減少するグルタチオン量を補う抗酸化物質である「グルタチオン点眼液」があります。
これらは市販されている目薬ではないため、医療機関を受診して処方してもらう必要があります。ただし、点眼による白内障の予防、進行抑制効果については現在と同等の基準をみたす薬効評価がなされておらず、効果については限定的です。
点眼薬の使用を検討される場合は、必ず眼科医にご相談ください。
白内障手術について知っておきたいこと
予防に努めても、加齢とともに白内障は進行します。日常生活に支障が出るようになったら、手術を検討する時期です。
白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術です。現在の白内障手術は、目薬による麻酔で行う日帰り手術が主流となっています。小さな切開で行うため体への負担が少なく、10分ほどで完了します。
当院では、患者さん一人ひとりの目の状態やライフスタイルに合わせて、最適な眼内レンズを提案しています。保険適用の単焦点レンズに加え、乱視を軽減できる保険適用レンズも取り扱っています。
手術後は、数日〜数週間の経過観察が必要です。目薬の使用方法や生活上の注意点もしっかりとお伝えしますので、安心して手術を受けていただけます。
白内障手術は、視力回復だけでなく、生活の質の向上にもつながります。手術のタイミングや方法について気になることがあれば、ぜひご相談ください。
まとめ:目の健康を守るために今日からできること
白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる病気ですが、紫外線対策や生活習慣の改善によって、その進行を遅らせることができます。
今日からできる白内障予防法をまとめると以下の3つになります。
- 紫外線対策:UV加工されたサングラスやつばの広い帽子、日傘などを活用し、目に入る紫外線量を減らしましょう。曇りの日も油断せず、紫外線対策を心がけてください。
- 抗酸化物質の摂取:ビタミンC、ベータカロチン、ルテイン、ゼアキサンチンなどの抗酸化物質を含む食品を積極的に摂取しましょう。色とりどりの野菜や果物を日々の食事に取り入れることが大切です。
- 生活習慣の改善:禁煙、適度な運動、定期的な眼科検診を心がけましょう。また、糖質の過剰摂取を控え、血糖値の急上昇を防ぐことも重要です。
目は一生使う大切な感覚器官です。若いうちから紫外線対策をしっかり行い、健やかな目を維持しましょう。
当院では、白内障をはじめとする様々な目の病気の診断・治療を行っています。目に関するお悩みがあれば、お気軽に幕張久木元眼科までご相談ください。患者さん一人ひとりに合わせた、最適な医療を提供いたします。
著者情報
幕張久木元眼科 院長 久木元 延行

経歴
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白内障・屈折矯正外来 主任
– 糖尿病網膜症専門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院
資格
日本眼科学会認定眼科専門医
水晶体嚢拡張リング認定医
難病指定医
ボトックス認定医(眼瞼痙攣、斜視)
光線力学療法認定医
所属学会
日本眼科学会
日本眼手術学会
日本白内障屈折矯正学会
日本網膜硝子体学会
日本糖尿病眼学会


