白内障手術が必要なタイミング|医師が教える10の判断基準
- 2025年8月19日
- 白内障
白内障とは?症状と進行について
白内障は、目の中の「水晶体」が濁ることで視界が悪くなる病気です。水晶体はカメラでいうレンズに相当する部分で、この部分が濁ると光が網膜に正しく届かなくなります。
白内障の主な原因は加齢による自然な変化です。50歳代で約40%、60歳代で約70%、70歳代で90%、80歳代ではほぼ100%の方が発症するといわれています。
白内障になると、以下のような症状が現れます。
- 視力の低下(メガネを変えても改善しない)
- かすみやぼやけた感じがする
- まぶしさ(羞明)を感じる
- 色がくすんで見える
- 物が二重に見える(複視)
- 夜間の見えにくさ
白内障は進行性の病気であり、一度発症すると自然に治ることはありません。また、白内障用の目薬は進行を遅らせる効果はありますが、白内障を治したり視力を回復させたりする効果はないのです。
白内障手術が必要な10の判断基準
白内障手術のタイミングは人それぞれですが、以下の10の判断基準を参考にしていただければと思います。
日常生活に支障が出始めたときが、手術を検討する最適なタイミングです。ただし、個々の状況によって判断は異なりますので、眼科医との相談が重要になります。
1. 日常生活に支障が出てきた
「見えにくい」と感じ始め、読書やテレビ視聴、料理などの日常生活に不便を感じるようになったら、手術を検討するタイミングです。
特に、趣味や仕事に影響が出始めた場合は、生活の質を維持するためにも手術を考慮すべきでしょう。
2. 視力低下が進行している
定期的な視力検査で視力の低下が確認され、メガネやコンタクトレンズでは十分に矯正できなくなってきた場合は、手術を検討する時期かもしれません。
特に、両眼の視力が0.7を下回るようになると、日常生活への影響が大きくなります。
3. 運転免許の更新が近づいている
運転免許の更新時には視力検査があります。普通自動車の運転免許更新時の基準は、「左右とも0.3以上で、両眼で0.7以上」が必要です。
片眼の視力が0.3未満の場合は、もう片方の眼の視力は0.7以上で視野が左右150度以上必要となります。運転が必要な方は、免許更新の前に白内障手術を検討することも選択肢の一つです。
4. 核白内障が進行している
核白内障は水晶体の中心部が硬く膨らむタイプの白内障です。
「老眼だったのに眼鏡なしでも近くが見えるようになった」という症状が特徴ですが、遠くはぼやけて見えるようになります。この状態は自覚症状に気づきにくいため、眼科医から「水晶体の中身が硬くなってきているので早く手術を受けた方がいい」と言われた場合は、生活に支障がなくても早めに手術を検討すべきです。
5. まぶしさが強くなっている
白内障が進行すると、光がまぶしく感じられるようになります。夜間の運転時に対向車のヘッドライトがまぶしく感じたり、晴れた日の外出がつらくなったりする場合は、手術を検討するタイミングです。
このまぶしさは、水晶体の濁りによって光が乱反射することで生じます。手術によって濁った水晶体を取り除くことで、まぶしさは大幅に改善されます。
6. 色の識別が難しくなっている
白内障が進行すると、色がくすんで見えたり、色の識別が難しくなったりします。特に青や紫などの色の識別が困難になることがあります。
料理の際に食材の色が判別しづらい、信号の色が見分けにくいなどの症状が現れたら、手術を検討するタイミングです。
7. 両眼の視力差が大きくなっている
片方の目の白内障が進行し、両眼の視力差が大きくなると、立体視が困難になり、奥行きの判断が難しくなります。
階段の昇り降りや物の位置の把握が難しくなると、転倒のリスクも高まります。両眼の視力差が大きい場合は、手術を検討する時期かもしれません。
8. 他の眼疾患の検査や治療が必要
白内障が進行すると、眼底検査が困難になり、緑内障や糖尿病網膜症などの他の眼疾患の検査や治療が難しくなることがあります。
特に糖尿病や高血圧などの持病がある方は、眼底の定期検査が重要です。白内障によって眼底検査が困難になる前に手術を検討することも必要です。
9. 白内障が進行して硬くなっている
白内障が進行しすぎると、水晶体が硬くなり、手術の難易度が上がることがあります。
手術時間が長くなったり、合併症のリスクが高まったりする可能性があるため、眼科医から「手術を受けるなら早めに」と言われた場合は、その助言に従うことをお勧めします。
10. 精神的なストレスや不安が大きい
視力低下による不安や精神的ストレスが大きい場合も、手術を検討する理由になります。
「このまま見えなくなるのではないか」という不安は、生活の質を大きく低下させます。白内障は適切な時期に手術を受ければ、視力回復が期待できる病気です。不安が大きい場合は、眼科医に相談してみましょう。
白内障手術のメリットとタイミングの重要性
白内障手術を受けることで、以下のようなメリットが期待できます。
- 視力の回復
- 色がはっきり見えるようになる
- まぶしさの軽減
- コントラスト感度の向上
- 生活の質の向上
白内障手術は、現代の医療技術では非常に安全で効果的な手術です。日帰りで行われることが多く、局所麻酔を使用するため痛みもほとんどありません。
手術のタイミングは非常に重要です。あまりに早すぎると必要のない手術になる可能性がありますが、遅すぎると以下のようなリスクが高まります。
- 手術の難易度が上がる
- 合併症のリスクが高まる
- 回復期間が長くなる可能性がある
- 他の眼疾患の発見や治療が遅れる
白内障手術のタイミングは、「困ったときが手術のタイミング」というのが基本です。しかし、自覚症状がなくても進行している場合もあるため、定期的な眼科検診が重要です。
白内障手術の種類と選択肢
白内障手術には主に以下の種類があります。
1. 超音波乳化吸引術(標準的な白内障手術)
現在最も一般的な白内障手術の方法です。3mm程度の小さな切開から超音波で水晶体を砕き、吸引して取り除きます。その後、人工の眼内レンズを挿入します。
傷口が小さいため、縫合が不要で回復も早いのが特徴です。多くの場合、日帰り手術で行われます。
2. フェムトセカンドレーザー白内障手術
最新の技術を用いた手術方法で、レーザーを使って水晶体を砕き、より精密な手術が可能になります。従来の手術よりも安全性が高く、回復も早いとされていますが、費用が高額になる傾向があります。
眼内レンズの種類と選択
白内障手術では、濁った水晶体を取り除いた後、人工の眼内レンズを挿入します。眼内レンズには以下のような種類があります。
- 単焦点眼内レンズ:最も一般的で保険適用。遠くか近くのどちらかにピントを合わせます。
- 乱視矯正眼内レンズ:乱視も同時に矯正できるレンズ。一部は保険適用外で追加費用が必要。
- 多焦点眼内レンズ:遠近両用のレンズで、遠くと近くの両方を見ることができます。保険適用外で高額な追加費用が必要。
レンズの選択は、生活スタイルや職業、趣味などによって異なります。医師と相談しながら、自分に合ったレンズを選ぶことが大切です。
白内障手術前に知っておくべきこと
白内障手術を受ける前に、以下のことを知っておくと安心です。
手術の流れと当日の様子
白内障手術は通常、以下のような流れで行われます。
- 術前検査(眼の長さや角膜の曲率を測定)
- 点眼による麻酔
- 手術(10〜20分程度)
- 術後の休憩と診察
- 帰宅(日帰り手術の場合)
手術は局所麻酔で行われるため、痛みはほとんどありません。「まぶしい光が見える」「わずかに押される感覚がある」程度の感覚です。
手術後の経過と注意点
手術後は以下のような経過をたどることが一般的です。
- 術後1日目:翌日の診察で眼帯を外します
- 術後1週間:徐々に視力が安定してきます
- 術後1ヶ月:ほとんどの方が視力が安定します
手術後の注意点としては、以下のようなことがあります。
- 目をこすらない
- 激しい運動や重い物の持ち上げを避ける(1週間程度)
- 処方された点眼薬を指示通りに使用する
- 入浴は可能だが、洗髪時に目に水が入らないよう注意する
- 異常を感じたらすぐに医師に相談する
白内障手術に関するよくある質問
白内障手術について、患者さんからよく質問される内容とその回答をご紹介します。
手術のリスクについて
白内障手術は非常に安全な手術ですが、どんな手術にもリスクはあります。主なリスクとしては、感染症、眼圧上昇、網膜剥離、後発白内障などがあります。
しかし、これらの合併症の発生率は非常に低く、多くの場合は適切な治療で対応可能です。手術前に医師から詳しい説明を受け、不安な点は質問することが大切です。
手術の費用はどのくらい?
白内障手術は基本的に保険適用となります。3割負担の場合、片眼あたり約3〜5万円程度が一般的です。
ただし、多焦点眼内レンズや乱視矯正眼内レンズなど特殊なレンズを選択する場合は、保険適用外となり追加費用が必要です。多焦点眼内レンズの場合、片眼あたり15〜30万円程度の追加費用がかかることが一般的です。
仕事はいつから再開できる?
デスクワークなど軽作業であれば、術後2〜3日程度で再開可能なことが多いです。ただし、重労働や粉塵の多い環境での作業は、1〜2週間程度避けた方が良いでしょう。
また、運転は医師の許可が出てから再開することをお勧めします。通常は術後1週間程度で許可が出ることが多いです。
まとめ:白内障手術の判断基準と適切なタイミング
白内障手術が必要なタイミングは人それぞれですが、日常生活に支障が出始めたときが手術を検討する最適なタイミングです。
本記事で紹介した10の判断基準を参考に、ご自身の状況を振り返ってみてください。視力低下、まぶしさ、色の識別困難、日常生活への支障など、気になる症状があれば眼科を受診することをお勧めします。
白内障は進行性の病気であり、一度発症すると自然に治ることはありません。しかし、適切なタイミングで手術を受ければ、視力回復が期待できる病気です。
定期的な眼科検診を受け、眼科医と相談しながら、最適な治療のタイミングを見極めることが大切です。
白内障でお悩みの方は、ぜひ幕張久木元眼科にご相談ください。患者さん一人ひとりの状況に合わせた、オーダーメイドの医療を提供いたします。
詳しい情報や予約方法については、幕張久木元眼科のホームページをご覧ください。
著者情報
幕張久木元眼科 院長久木元 延行
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白內障 •屈折矯正外来 主任
-糖尿病網膜症專門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院