白内障の進行度別〜最適な手術タイミングを眼科医が解説
- 2025年7月28日
- 白内障
白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる目の病気です。水晶体が濁ることで視界がかすんだり、まぶしさを感じたりする症状が現れます。私は長年眼科医として多くの白内障患者さんを診てきましたが、「いつ手術をすべきか」という質問をよくいただきます。
白内障の進行度によって最適な手術のタイミングは異なります。今回は白内障の進行度別に、手術を検討すべき時期について解説します。
白内障の進行度とは
白内障は進行度によって大きく4つの段階に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
初期白内障
初期段階では、水晶体の皮質が少し濁り始めます。この時期はほとんど自覚症状がなく、日常生活に支障をきたすことはあまりありません。
定期的な眼科検診で発見されることが多く、「初発白内障」とも呼ばれます。40歳を過ぎたら定期検診を受けることをお勧めします。この段階では手術の必要はなく、経過観察が基本となります。
中期白内障
中期になると、水晶体の濁りが進行し、視力に影響が出始めます。目のかすみやまぶしさといった自覚症状が現れることが特徴です。
皮質から水晶体の核にかけて濁りが広がり、特に明るい場所でのまぶしさを感じる方が多くなります。日常生活に少し支障が出始めるため、この段階で手術を検討する方も増えてきます。
手術を検討すべきタイミング
白内障手術のタイミングは患者さん一人ひとりの状況によって異なります。私が長年の臨床経験から考える、手術を検討すべきタイミングについてお話しします。
日常生活に支障が出始めたとき
「新聞や本が読みづらい」「夜間の運転で対向車のライトがまぶしい」「趣味の細かい作業ができなくなった」など、日常生活に支障が出始めたら手術を検討するタイミングです。
特に車の運転をされる方は、安全面を考慮して早めの手術をお勧めすることがあります。視力低下が進むと事故のリスクも高まるからです。
視力低下が進行しているとき
定期検診で視力の低下が確認され、進行のスピードが速いと判断された場合は、早めの手術を検討します。視力の変化は個人差が大きいため、定期的な検査が重要です。
眼鏡をかけても視力が出なくなってきた場合も、手術を検討するタイミングといえるでしょう。
成熟白内障と過熟白内障
白内障をあまりに放置すると、より深刻な状態に進行します。ここでは進行した白内障について解説します。
成熟白内障
成熟白内障は、水晶体の濁りが全体に広がった状態です。外から見ても白く見えるほど進行しており、視力に深刻な影響を与えます。
この段階では日常生活に大きな支障をきたし、視界はかなりかすんでいます。手術によるリスクも若干高まるため、できれば成熟白内障になる前に手術を受けることをお勧めします。
過熟白内障
過熟白内障は最も進行した状態で、水晶体の中の物質が漏れ出し、眼内の炎症や緑内障を引き起こす危険性があります。
この段階まで進行すると、手術の難易度が上がり、合併症のリスクも高まります。決してここまで放置せず、早めの治療が必要です。
白内障手術のメリット
白内障手術には様々なメリットがあります。現代の白内障手術は技術の進歩により、より安全で効果的になっています。
視力回復と生活の質の向上
手術の最大のメリットは視力の回復です。濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入することで、クリアな視界を取り戻すことができます。
色彩もくっきりと見えるようになり、コントラストも改善します。多くの患者さんが「世界が明るく鮮やかになった」と喜ばれます。
当院では保険適応の乱視矯正可能な単焦点レンズも取り扱っており、「眼鏡をかけなくてもよく見える」ことにこだわった治療を提供しています。軽度の乱視でも適応があれば積極的に乱視矯正を行います。
白内障手術は日帰りで行え、手術時間も通常10分程度と短時間です。現代の手術は2.4mm程度の極小切開で行われ、出血もほとんどなく比較的安全です。
まとめ〜最適な手術タイミング
白内障の手術タイミングは、進行度と生活への影響を総合的に判断して決めるべきです。初期段階では経過観察で問題ありませんが、中期以降で日常生活に支障が出始めたら手術を検討しましょう。
特に以下のような症状があれば、手術を検討するタイミングです。
- 眼鏡をかけても視力が出なくなってきた
- まぶしさが強く、日常生活に支障がある
- 運転免許の更新で視力検査に引っかかった
- 趣味や仕事など、大切な活動に支障が出ている
白内障は放置すると進行するばかりで、自然に良くなることはありません。進行すればするほど手術の難易度も上がります。気になる症状があれば、早めに眼科を受診して相談することをお勧めします。
当院では患者さん一人ひとりの状態や希望に合わせたオーダーメイドの医療を提供しています。白内障でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
詳しい情報や日帰り白内障手術についてはこちらをご覧ください。
著者情報
幕張久木元眼科 院長久木元 延行
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白內障 •屈折矯正外来 主任
-糖尿病網膜症專門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院