白内障手術後の視力回復〜どこまで期待できるのか
- 2025年7月28日
- 白内障
白内障手術を検討されている方にとって、「手術後どれくらい見えるようになるのか」は最大の関心事ではないでしょうか。眼科専門医として数多くの白内障手術を手がけてきた経験から、手術後の視力回復について詳しくお話しします。
白内障は眼球内の水晶体が濁る病気で、主に加齢によって発症します。60代以上の方の6〜8割に初期段階の水晶体混濁が見られるといわれています。治療法は手術による濁った水晶体の除去と眼内レンズの挿入しかありません。
では、手術後の視力はどこまで回復するのでしょうか。
白内障手術後の視力回復プロセス
白内障手術を受けると、多くの方は術後すぐに視界の明るさを実感されます。濁っていた水晶体が透明な眼内レンズに置き換わるため、光の量が増えるからです。
しかし、視力が完全に安定するまでには時間がかかります。術後の視力回復プロセスは一般的に次のような経過をたどります。
手術直後は、瞳孔が広がっているため違和感を覚える方も多くいらっしゃいます。また、自分の水晶体と眼内レンズでは焦点の合わせ方が異なるため、脳が新しい見え方に慣れるまで時間がかかることもあります。
術後1日目から視力が改善し始め、1週間程度で大きく回復する方が多いですが、完全に安定するまでには約1ヶ月かかると考えられています。
どうですか?思ったより回復に時間がかかると感じましたか?
術後の視力回復に影響する要素
白内障手術後の視力回復は個人差が大きく、以下の要素に影響されます。
- 白内障の進行度
- 網膜など他の眼の組織の健康状態
- 糖尿病や高血圧などの全身疾患の有無
- 選択した眼内レンズの種類
- 術前からの乱視の有無と程度
特に重要なのは、網膜の状態です。いくら白内障の濁りを取り除いても、網膜に問題があれば視力の回復には限界があります。
どこまでの視力回復が期待できるのか
「手術をすれば若い頃のような視力に戻るのか」とよく質問を受けます。結論から言うと、白内障だけが視力低下の原因であれば、手術によって大幅な視力回復が期待できます。
しかし、白内障手術前の検査は濁った水晶体がある状態で行うため、術後の正確な視力を予測することは難しいのが現実です。手術前の段階で具体的な数値をお伝えすることはできません。
多くの患者さんは手術後、日常生活に支障がないレベルまで視力が回復します。具体的には、新聞が読める、テレビがはっきり見える、運転ができるといったレベルです。
ただし、白内障以外の眼疾患(緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症など)がある場合は、視力回復に限界があることをご理解いただく必要があります。
眼内レンズの選択と視力回復の関係
白内障手術で使用する眼内レンズの種類によっても、術後の見え方は大きく異なります。主に以下の2種類があります。
- 単焦点レンズ:最も一般的なレンズで、見え方の質が最も良いですが、ピントを合わせられる距離が1か所のみで、日常生活での眼鏡依存度が高くなります。
- 多焦点レンズ:複数の距離にピントを合わせられるため眼鏡依存度を減らせますが、見え方の質は単焦点より劣り、慣れるまで時間がかかります。また費用も高額になります。
当院では保険適応の乱視矯正可能な単焦点レンズも取り扱っており、軽度の乱視でも適応があれば積極的に使用しています。「眼鏡をかけなくてもよく見える」ことにこだわり、患者さん一人ひとりに最適なレンズを選択することが大切です。
術後の視力安定までの生活上の注意点
白内障手術は日帰りで行われ、術後すぐに日常生活に戻れる方が多いですが、視力が安定するまでには注意が必要です。
術後1週間程度は以下の点に注意しましょう。
- 目をこすらない
- 指示された目薬を正確に使用する
- 洗顔・洗髪は術後1週間控える
- 化粧・アイメイクは術後1週間控える
- ヘアカラー・パーマは術後1ヶ月控える
- 重い物を持つ作業や激しい運動は控える
- 運転は視力が安定してから再開する
軽い散歩や日常家事、デスクワークは手術翌日から可能ですが、汗をかくような運動や重労働は1週間控えましょう。
術後の定期検診も重要です。医師の指示に従って必ず受診してください。
後発白内障について知っておきましょう
白内障手術を受けた方の約2割に「後発白内障」が発生します。これは白内障が再発したわけではなく、眼内レンズを支える袋(水晶体嚢)が濁ることで起こります。
数ヶ月から数年後に「また見えにくくなった」と感じたら、後発白内障の可能性があります。レーザー治療で簡単に改善できますので、症状を感じたらすぐに眼科を受診してください。
視力回復を最大化するためのポイント
白内障手術後の視力回復を最大限にするためには、以下のポイントが重要です。
まず、医師の指示に従った術後ケアが最も重要です。目薬の使用、生活上の注意点を守ることで合併症のリスクを減らせます。
次に、定期検診をしっかり受けることです。術後の経過観察は視力回復の過程で問題がないか確認するために必要不可欠です。
また、全身の健康管理も大切です。糖尿病や高血圧などの持病がある方は、適切な管理を続けることで眼の健康維持につながります。
最後に、眼鏡やコンタクトレンズが必要な場合は、視力が安定する術後1ヶ月を目安に作成することをお勧めします。
まとめ
白内障手術後の視力回復は個人差がありますが、多くの方は日常生活に支障のないレベルまで回復します。術後すぐに見え方が改善し始め、約1ヶ月で安定するのが一般的です。
視力回復の程度は、白内障の進行度や他の眼疾患の有無、選択した眼内レンズの種類によって異なります。また、術後のケアや定期検診をしっかり行うことで、より良い視力回復が期待できます。
白内障手術は現代の医療技術の進歩により、安全性が高く効果的な治療法となっています。手術に不安をお持ちの方は、ぜひ眼科専門医にご相談ください。一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドの医療を提供し、より良い視力回復をサポートいたします。
詳しい情報や白内障手術についてのご相談は、幕張久木元クリニックまでお気軽にお問い合わせください。
著者情報
幕張久木元眼科 院長久木元 延行
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白內障 •屈折矯正外来 主任
-糖尿病網膜症專門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院