白内障手術後の度数ずれはなぜ起こる?〜原因と対処法を解説
- 2026年7月16日
- 白内障

白内障手術後の「度数ずれ」とは何か?
白内障手術後の「度数ずれ」とは、術後の実際の屈折度数(ピントの合う位置)が、術前に計画した目標値からずれてしまう現象です。医学的には「屈折誤差(Refractive Error)」と呼ばれます。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズ(IOL)を挿入します。このとき、術後に「遠くが見えるようにしたい」「近くも見えるようにしたい」といった目標度数を設定しますが、術後の実際の見え方がその目標と一致しないことがあります。
軽度の度数ずれは眼鏡やコンタクトレンズで対応できますが、大きなずれは日常生活に支障をきたすこともあります。本記事では、度数ずれが起こる原因・対処法・再手術の判断基準について、臨床現場での知見をもとに詳しく解説します。
幕張久木元眼科
手術後の見え方が気になっていませんか?
術後の度数ずれには、目の状態や測定上の要因などさまざまな背景があります。見え方に不安があれば、検査のうえで対応方法をご相談ください。
白内障手術後に度数ずれが起こる主な原因は何か?

度数ずれの原因は複数あり、術前検査の測定誤差・眼内レンズ計算式の限界・術後の眼の変化の3つに大きく分類されます。それぞれを順に解説します。
眼軸長・角膜形状の測定誤差
眼内レンズの度数を決めるには、「眼軸長(眼球の前後の長さ)」と「角膜曲率(角膜のカーブ)」の正確な測定が不可欠です。
眼軸長はわずか0.1mmの誤差でも、術後の屈折度数が約0.25〜0.3ジオプトリーずれると言われています。白内障が進行して水晶体が著しく濁っている場合、超音波測定では精度が落ちることがあります。
また、角膜の形状が不規則な「不正乱視」がある場合も、計算値と実際の見え方が一致しにくくなります。現在の最新機器・最新の計算方法をもってしても、わずかな屈折誤差が生じることがあると報告されています。
眼内レンズ度数計算式の限界
眼内レンズの度数は「IOL計算式」と呼ばれる数式で算出されます。代表的なものにSRK/T式・Haigis式・Barrett Universal II式などがあります。
これらの計算式は、標準的な眼の形状を前提に設計されています。そのため、強度近視・強度遠視・眼軸長が極端に長い・短い眼では予測精度が下がりやすい傾向があります。
- 強度近視(眼軸長26mm以上):眼軸が長いほど計算誤差が出やすい
- 強度遠視(眼軸長21mm以下):短眼軸では過矯正になりやすい
- 過去にLASIKや角膜屈折矯正手術を受けた眼:角膜の形状が変化しており、通常の計算式が適用しにくい
術後の眼の変化による度数ずれ
手術が問題なく終了しても、術後の経過で度数がずれることがあります。主な要因は以下の通りです。
- 眼内レンズの位置ずれ(傾き・偏心):レンズが水晶体嚢内で想定と異なる位置に落ち着く
- 後嚢収縮(PCO):レンズを支える袋が収縮し、レンズの位置が変化する
- 術後の角膜浮腫:手術直後は角膜が一時的に腫れ、屈折が変化する
- ドライアイの悪化:涙液の不安定さが視力測定値に影響し、見え方のばらつきを生じる
これらの多くは時間の経過とともに安定しますが、一部は追加の対処が必要になります。

度数ずれが起きやすいのはどんな患者さんか?
すべての患者さんに度数ずれが起こるわけではありませんが、特定の眼の条件を持つ方はリスクが高めです。
- 強度近視・強度遠視の方:眼軸長が標準から大きく外れるため計算誤差が出やすい
- 過去に角膜屈折矯正手術(LASIK・PRKなど)を受けた方:角膜形状が変化しており、通常の計算式が使いにくい
- 角膜に不正乱視がある方:像が眼底で正確に結ばれにくい
- 糖尿病・緑内障・加齢黄斑変性などの合併症がある方:視力改善の上限が制限される場合がある
- 白内障が非常に進行している方:水晶体の濁りが強く、術前測定の精度が落ちる
術前に担当医からこれらのリスクについて十分な説明を受け、目標度数の設定を慎重に行うことが大切です。眼内レンズの選択は担当医とよく相談して決めることが重要と案内しています。
度数ずれの症状〜術後どんな見え方になるか?
度数ずれが生じると、「ピントが合わない」「遠くが見えにくい」「近くが見えにくい」「ぼやける」といった症状が現れます。
具体的には以下のような訴えが多く見られます。
- 遠くがぼやける(近視方向のずれ):目標より近視側に度数がずれた場合
- 近くが見えにくい(遠視方向のずれ):目標より遠視側に度数がずれた場合
- 乱視が残っている感じ:角膜乱視が十分に矯正されなかった場合
- 左右の見え方のバランスが悪い:両眼の度数差が大きい場合(不同視)
- 多焦点レンズでのハロー・グレア:多焦点眼内レンズ特有の光の滲みや輪
これらの症状は、術後1〜3か月で視力が安定してから評価するのが原則です。手術直後は角膜浮腫や炎症の影響で見え方が変動するため、安定前の判断は避けましょう。
術後にピントが合わない・二重に見えるといった症状はレンズのズレや眼圧異常が疑われるため、早めの受診が推奨されています。
度数ずれへの対処法〜どんな方法があるか?
度数ずれへの対処は、ずれの程度・方向・患者さんの希望によって異なります。大きく「保存的治療」と「外科的治療」に分かれます。

眼鏡・コンタクトレンズによる矯正
度数ずれが軽度〜中等度の場合、眼鏡やコンタクトレンズで矯正するのが最も安全で一般的な方法です。
術後の屈折が安定する1〜3か月後に、正確な屈折検査を行い、適切な度数の眼鏡を処方します。「手術したのに眼鏡が必要なの?」と感じる方もいますが、単焦点眼内レンズでは遠方に合わせると近方は眼鏡が必要になるのが通常です。
- メリット:安全・非侵襲的・いつでも度数変更が可能
- デメリット:眼鏡・コンタクトへの依存が続く
術後の見え方のご相談を承っています
当院では術後の経過を定期的に確認し、必要に応じて眼鏡処方などの対応をご提案します。気になる点はお気軽にお尋ねください。
追加レーザー手術(LASIK・PRK)による矯正
度数ずれが大きく、眼鏡なしの生活を強く希望する場合は、角膜に対するレーザー屈折矯正手術(LASIK・PRK)を追加で行う選択肢があります。
角膜の厚みが十分にあり、他の条件を満たす場合に適応となります。眼内レンズ自体は交換せず、角膜の形状を変えることで度数を微調整します。
- メリット:眼鏡不要の生活に近づける可能性がある
- デメリット:追加の手術リスク・角膜の厚みが必要・全員に適応できるわけではない
眼内レンズの交換・追加挿入(ピギーバック法)
度数ずれが大きく、レーザー手術も適応外の場合は、眼内レンズの交換や、既存レンズの前に薄いレンズを追加挿入する「ピギーバック法」が検討されます。
ただし、これらは再手術となるため、リスクと利益を慎重に比較する必要があります。術後の炎症・眼圧上昇・角膜内皮細胞の減少などのリスクがあるため、適応は限られます。
- 眼内レンズ交換:術後早期(目安として数週間以内)に行うほど容易
- ピギーバック法:既存レンズを残したまま追加レンズを挿入する方法
度数ずれを防ぐために術前にできることは何か?
度数ずれを完全になくすことは現時点では困難ですが、精度の高い術前検査と医師との十分な目標設定の共有によってリスクを最小化できます。
術前に確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- 眼軸長・角膜形状の精密測定:光学式(IOLマスターなど)の測定機器を使用しているか確認する
- 目標度数の明確な共有:「遠くに合わせるか」「近くに合わせるか」「左右差をどうするか」を担当医と具体的に話し合う
- 合併症の有無を把握する:糖尿病網膜症・緑内障・黄斑疾患などがあれば、術後視力の上限が制限される可能性を理解しておく
- 多焦点レンズの特性を理解する:多焦点眼内レンズはハロー・グレアが出ることがあり、単焦点と比べて見え方の質が異なる点を事前に把握する
- 過去の屈折矯正手術歴を申告する:LASIKなどの既往がある場合は必ず担当医に伝える
幕張 久木元眼科では、東京医科歯科大学病院白内障・屈折矯正外来の元主任である久木元延行院長が、眼内レンズの選択にとことんこだわった診療を提供しています。多焦点眼内レンズ・乱視矯正レンズを複数取り扱い、患者さん一人ひとりの眼の状態やライフスタイルに合わせたオーダーメイドの提案を行っています。白内障手術をご検討の方は、ぜひ幕張 久木元眼科にご相談ください。イオンモール幕張新都心グランドモール1階に位置し、土日祝日も診療・WEB予約対応・駐車場完備で受診しやすい環境が整っています。
術後に「見え方がおかしい」と感じたらどうすればよいか?
術後に違和感を感じたら、まずは手術を受けた眼科に相談することが最優先です。自己判断で放置するのは避けましょう。
受診の目安となる症状は以下の通りです。
- 視力が安定せず、日によって変動する
- 術後1か月以上経ってもぼやけが改善しない
- 強い痛みを伴う急な視力低下(緊急受診が必要)
- 黒い影や飛蚊症が急に増えた(網膜剥離の可能性)
- 左右の見え方のバランスが著しく悪い
術後の視力安定には通常1〜3か月かかります。ただし、症状が日に日に悪化する場合や強い痛みを伴う場合は、感染症・眼圧上昇などの合併症が疑われるため、速やかに受診してください。
度数ずれと後発白内障(眼内レンズを支える袋が濁る状態)は症状が似ていることがあります。後発白内障はレーザー治療(YAGレーザー)で数分で改善できるため、視力低下が続く場合は早めに眼科を受診することをお勧めします。
よくある質問
白内障手術後の度数ずれはどのくらいの割合で起こりますか?
完全に目標度数と一致することは難しく、軽度の誤差は一定の確率で生じます。現在の最新計算式でも、強度近視・強度遠視・過去に角膜屈折矯正手術を受けた眼では誤差が出やすい傾向があります。
度数ずれが起きた場合、眼鏡で対応できますか?
軽度〜中等度の度数ずれは眼鏡やコンタクトレンズで矯正できます。術後1〜3か月で屈折が安定してから、正確な度数の眼鏡を処方してもらうのが一般的な対応です。
度数ずれの再手術はどんな方法がありますか?
主にLASIK・PRKなどの角膜レーザー手術、眼内レンズ交換、ピギーバック法(追加レンズ挿入)の3つがあります。ずれの程度・角膜の状態・患者さんの希望に応じて適切な方法を選択します。
多焦点眼内レンズでも度数ずれは起こりますか?
はい、多焦点眼内レンズでも度数ずれは起こります。さらに多焦点レンズはハロー・グレアが出やすく、単焦点と比べてコントラスト感度が低下することもあるため、術前に十分な説明を受けることが重要です。
術後どのくらいで度数が安定しますか?
一般的に術後1〜3か月で屈折度数が安定します。手術直後は角膜浮腫や炎症の影響で見え方が変動するため、安定前の眼鏡処方は避けるのが原則です。
強度近視の人は度数ずれのリスクが高いですか?
はい、強度近視(眼軸長26mm以上)の方は計算誤差が出やすいです。眼軸が長いほど0.1mmの測定誤差が大きな屈折誤差につながるため、精密な測定機器の使用と慎重な計算式の選択が重要です。
過去にLASIKを受けた目の白内障手術は難しいですか?
LASIK後の眼は角膜形状が変化しているため、通常の計算式が適用しにくく度数ずれのリスクが高まります。LASIK既往がある場合は必ず術前に担当医へ申告し、専用の計算式を使用してもらうことが重要です。
後発白内障と度数ずれの違いは何ですか?
後発白内障は術後に眼内レンズを支える袋(水晶体嚢)が濁る状態で、視力低下・かすみの原因になります。度数ずれとは原因が異なり、YAGレーザー治療で数分で改善できます。視力低下が続く場合は受診して原因を確認しましょう。
度数ずれを防ぐために患者側でできることはありますか?
術前に目標度数を担当医と具体的に共有すること、過去の屈折矯正手術歴を申告すること、合併症の有無を把握しておくことが重要です。精密な術前検査を行うクリニックを選ぶことも大切です。
幕張 久木元眼科では度数ずれへの対応はどうなっていますか?
東京医科歯科大学病院白内障・屈折矯正外来の元主任である久木元院長が、眼内レンズの選択にこだわった診療を提供しています。多焦点・乱視矯正レンズを複数取り扱い、患者さんの眼の状態に合わせたオーダーメイドの提案を行っています。
結論
白内障手術後の度数ずれは、眼軸長の測定誤差・計算式の限界・術後の眼の変化など複数の要因が重なって起こります。軽度なら眼鏡・コンタクトで対応でき、大きなずれにはレーザー手術や眼内レンズ交換を検討します。リスクを最小化するには、精密な術前検査と担当医との目標度数の共有が最も重要です。手術を受けるクリニック選びの際は、眼内レンズの選択肢の豊富さと医師の専門性を確認しましょう。
幕張久木元眼科|術後の見え方もサポート
手術後に見えにくさを感じたときも、原因を確認しながら対応方法をご提案します。気になる症状は早めにご相談ください。土・日・祝日も診療しています。
千葉県千葉市美浜区豊砂1-1 イオンモール幕張新都心グランドモール1階/休診日:火曜
著者情報
幕張久⽊元眼科 院⻑ 久⽊元延⾏

経歴
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白内障・屈折矯正外来 主任
– 糖尿病網膜症専門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院
【資格】
日本眼科学会認定眼科専門医
水晶体嚢拡張リング認定医
難病指定医
ボトックス認定医(眼瞼痙攣、斜視)
光線力学療法認定医
【所属学会】
日本眼科学会
日本眼手術学会
日本白内障屈折矯正学会
日本網膜硝子体学会
日本糖尿病眼学会


