白内障手術の前に知っておきたい6つのこと|不安・準備・当日の流れを徹底解説
- 2025年12月12日
- 白内障

白内障手術を控えた方へ
「白内障の手術を受けることになったけれど、何を準備すればいいのだろう?」
「手術当日はどんな流れなのか、痛みはあるのか…」
このような不安を抱えている方は、決して少なくありません。白内障手術は年間150万件も行われている一般的な手術ですが、初めて受ける方にとっては未知の体験です。不安を感じるのは当然のことです。
私は幕張久木元眼科で院長を務める久木元延行と申します。東京医科歯科大学病院で白内障・屈折矯正外来の主任として多くの患者さんの治療に携わってきました。これまでの経験から、手術前の不安を少しでも和らげ、安心して治療に臨んでいただけるよう、この記事では**白内障手術の前に知っておきたい6つのこと**を詳しく解説いたします。
1. 白内障手術は本当に必要なのか?判断基準を知る
白内障手術を受けるべきかどうか。この判断に迷う方は多くいらっしゃいます。
日常生活に支障が出始めたら手術のタイミング

白内障は加齢とともに誰にでも起こる目の変化です。50歳代で約40%、60歳代で約70%、70歳代で90%、80歳代ではほぼ100%の方が発症するといわれています。ただし、白内障があるからといって、すぐに手術が必要というわけではありません。
手術を検討するタイミングは、**「日常生活に支障が出始めたとき」**です。
具体的には以下のような症状が現れたら、手術を考える時期かもしれません。
- 眼鏡をかけても新聞や本がかすんで見えない
- 運転のときにまぶしさを強く感じて怖い
- 運転免許の更新で視力検査に引っかかってしまった
- テレビの画面がぼやけて見づらい
- 料理や家事で細かい作業がしづらくなった
運転免許の更新基準も重要な判断材料
運転が必要な方にとって、視力は特に重要です。普通自動車の運転免許更新には「左右とも0.3以上で、両眼で0.7以上」の視力が必要です。片眼の視力が0.3未満の場合は、もう片方の眼の視力が0.7以上で、視野が左右150度以上必要となります。
免許更新が近づいている方は、早めに眼科を受診し、手術のタイミングを相談されることをお勧めします。
核白内障は早めの対応が必要
白内障にはいくつかのタイプがあります。その中でも「核白内障」は水晶体の中心部が硬く膨らむタイプで、進行すると手術の難易度が上がることがあります。
「老眼だったのに眼鏡なしでも近くが見えるようになった」という症状は、一見改善したように感じますが、実は核白内障の特徴的な症状です。この状態では遠くがぼやけて見えるようになります。眼科医から「水晶体の中身が硬くなってきているので早く手術を受けた方がいい」と言われた場合は、生活に支障がなくても早めに手術を検討すべきです。

白内障手術の選択肢|保険適用と自由診療の違い
白内障手術を保険適用で行う場合と自由診療で行う場合の違いを、メリット・デメリットを含めて眼科医がわかりやすく解説します。自分に合った治療法を選びたい方におすすめです。
2. 手術前の検査と準備|何をすればいいのか

手術を受けることが決まったら、次は準備です。
術前検査で目の状態を正確に把握
白内障手術の前には、目の状態を正確に把握するための検査が必要です。当院では以下のような検査を行います。
- 視力検査
- 細隙灯顕微鏡検査(水晶体の濁りの程度を確認)
- 眼圧測定
- 眼底検査
- 散瞳検査(必要に応じて)
- 光学式眼軸長測定(眼内レンズの度数を決めるため)
特に重要なのが、眼内レンズの度数を決めるための精密な検査です。眼の長さや角膜のカーブを測定し、患者さんの職業やライフスタイルに合わせて最適なレンズを選びます。
散瞳検査後は3〜5時間ほど車の運転ができませんので、来院時には公共交通機関をご利用いただくか、送迎のご協力をお願いしています。
手術前日の過ごし方
手術前日は、特別なことをする必要はありません。通常の生活を送っていただけます。ただし、以下の点を確認しておくと安心です。
- 来院および帰宅の手段の確認(自動車や自転車の運転はできません)
- お付き添いまたはお迎えの方の手配
- 体調管理(十分な睡眠と栄養)
糖尿病や高血圧などの持病がある場合は、その状態によっては主治医との連携も必要になることがあります。体調や服薬状況によっては、手術日程を調整する場合もあるため、余裕を持った準備が求められます。
感染予防のための準備
手術日が決まったあとは、感染予防のための抗菌目薬の使用が始まります。医師の指示に従い、正しい方法で点眼を続けることが大切です。
安心して手術に臨むためには、検査結果の説明をしっかりと受け、疑問点を事前に解消することが大切です。わからないことがあれば、遠慮なく質問してください。
3. 手術当日の流れ|何が起こるのか

手術当日は誰でも緊張するものです。しかし、流れを知っておくことで不安は和らぎます。
手術当日の注意点
手術当日は、以下の点に注意してください。
- 昼食は軽めにすませる
- 当日は洗顔をしっかりして、化粧はしない
- 眼帯をしたまま着替えるため、ゆったりとした前ボタンの服で来院
- 内科のお薬などは、手術前の休薬の指示がなければ、いつも通り服用
- お付き添いまたはお迎えの方と一緒に来院
手術の流れと所要時間
当院では、日帰り白内障手術を行っております。手術の流れは以下の通りです。
- 来院
所定の時刻までに来院し、受付を済ませていただきます。
- 手術開始前の準備
手術直前に麻酔の目薬をします。全身麻酔ではありませんので、手術中に常に意識はありますが痛みを感じることはありません。
- 手術
手術は、角膜(黒目)の脇を2〜3ヶ所小さく切開し、細長い器具を挿入して行います。濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出し、透明な人工レンズ(眼内レンズ)を挿入します。
手術自体は通常10分ほどで終わりますが、水晶体を含めた眼の状態によっては20分ほどかかる場合もあります。前後の準備や休憩を含めると全体で1時間ほどかかる場合が多いでしょう。
現在の白内障手術は切開が2.4mm程度と非常に小さく、出血もほとんどなく、比較的安全に手術が行えるようになっています。
手術中の感覚
手術中は局所麻酔が使用されるため、ほとんどの方が痛みを感じません。「まぶしい光が見える」「わずかに押される感覚がある」と表現されることが多いです。
怖さを感じることがあっても、患者さんの様子を見ながら医師やスタッフが声をかけます。不安を和らげるための環境が整っており、安心して身を任せることができます。

4. 眼内レンズの選び方|自分に合ったレンズとは
白内障手術で最も重要な決断の一つが、眼内レンズの選択です。
単焦点レンズと多焦点レンズの違い
眼内レンズには大きく分けて2種類あります。
単焦点レンズ
術後の見え方の質(色彩のコントラストなど)が最も良いレンズですが、ご自身でピントを合わせられる距離が1か所だけなので、日常生活の中で眼鏡への依存度が高いです。
単焦点レンズは「近く」「中間」「遠く」の3つに分けられ、どこがハッキリ見えるようになりたいかで選びます。近くは手元の30〜50cm、遠くは5mより遠くの距離を指し、中間はその間の60cmから1mくらいの距離を指します。
多焦点レンズ
ご自身でピントを合わせられる距離が複数あり、日常生活での眼鏡への依存度を減らすことができます。ただし、見え方の質は単焦点レンズに劣ること、見え方に慣れるのに時間がかかること、レンズ代が高額であることなどのデメリットもあります。
生活スタイルに合わせたレンズ選び
当院では、患者さんの生活スタイル・見え方の希望に合わせて選ぶことができます。
例えば、車の運転、サッカーやゴルフなどのスポーツをする方の場合は、遠くがハッキリ見えるレンズがよいでしょう。テレビを見たり、料理をしたりすることが多い方には中間がハッキリみえるレンズ、スマートフォンやパソコン、新聞や本を読む作業が多い方には近くがハッキリ見えるレンズが勧められます。
当院では患者ごとの生活環境(運転頻度・読書・PC作業など)を丁寧にヒアリングし、最適なレンズ選びをサポートしています。
乱視矯正レンズという選択肢
乱視がある方には、保険適応の乱視矯正レンズもご用意しています。当院は乱視矯正レンズの取り扱い実績が豊富で、「眼鏡をかけなくても快適に見える状態」を目指した治療を行っています。
レンズ選びは、患者さんの価値観で決めるべきです。多焦点レンズや単焦点レンズの良し悪し、それぞれのレンズのメリット・デメリットは生活スタイルによって決まるものだと考えています。
5. 手術後の生活|回復の流れと注意点
手術が終わったら、次は回復期間です。
手術直後の過ごし方
手術直後〜1週間は、細菌感染の予防や点眼治療の継続が必要なため、こまめな経過観察を行います。以下の点に注意してください。
- 指示どおりの点眼で感染を予防
- 目を触らない・こすらない
- 日常生活(散歩・家事)は翌日から可能
- 運転・運動・お化粧・カラーリングは1週間控える
手術後は感染予防のための点眼が必要ですが、回復は早く、翌日から家事や軽い仕事は可能です。
視力の回復と見え方の変化
手術後に見え方はどう変わるのでしょうか。
白内障の濁りを取ったことで目の中に入る光を直接感じやすくなるため、視界がすごく明るくなり、光の刺激で目が痛いと感じる方もいます。これは徐々に慣れてくることが多いです。
また、視界の端を小さいものが飛んでいる(飛蚊症)と感じる方もいます。これは目の中にあるゼリー(硝子体)の濁りにより、以前からあったものが白内障の濁りを取り除いたことで自覚症状が出現したものです。
視野の端の方で時々半弧状の光が見えることがある場合もあります。手術では直径6mm程度の小さな眼内レンズを挿入しますので、その端っこで光が乱反射してしまうことが原因で起こる症状と考えられます。発生頻度としてはかなり低いものですが、手術直後に訴えがあった方でも時間経過とともに改善することが多いものです。
気になる症状があればすぐに連絡
周術期は細菌感染や合併症などには充分な注意が必要ですので、こまめな経過観察が必要となります。医師の指示に従い、目薬や来院間隔を必ず守ってください。また、何か気になる症状があれば必ずご連絡ください。
スタッフもこまめに経過を見守りますので、不安なことはいつでもご相談ください。
6. 手術への不安を解消する|よくある質問

手術を前にした不安は誰にでもあります。よくある質問にお答えします。
「手術は痛くないですか?」
点眼麻酔を行うので、麻酔の際も、手術中も痛みはありません。ほとんどの方が痛みを感じることなく手術を終えられます。
「手術中に目が動いても大丈夫ですか?」
手術中は意識がありますが、医師やスタッフが声をかけながら進めます。万が一目が動いてしまっても、安全に対処できる体制が整っています。
「合併症が起こったらどうしよう」
合併症についてのお話はしますが、ほとんど起こることはありません。現代の白内障手術は成功率が95%に達するとされており、技術面での失敗はほとんどありません。
「ちゃんと見えるようになるのかな?」
白内障手術は適切な時期に適切な医療機関で受ければ、視力回復が期待できる病気です。手術後には、とても大きな感動が待っています。
ご自身の目の手術をやってもらおうと信頼した医師の話を信じることが良いでしょう。医師の話を信じられたなら、不安や怖さはほぼ自然に無くなっていくでしょう。
術後の新生活への期待
手術をして、しっかりと見えるようになった皆さんは何をされていますか?
お孫さんと一緒に、芝生の上でお弁当を食べ、気持ちいい青空を眺めているでしょうか?読みたくて買った本を読んでいますか?数年前に買ったテレビがあまりに綺麗で驚いていますか?
白内障の手術を受けた後には、とても大きな感動が待っています。ネガティブになりがちな思考はおさえて、新しい生活、楽しい日々を想像することで、不安や怖さを期待が乗り越えてくれるはずです。
まとめ|安心して手術を受けるために
白内障手術の前に知っておきたい6つのことをご紹介しました。
- 日常生活に支障が出始めたら手術のタイミング
- 術前検査で目の状態を正確に把握し、準備を整える
- 手術当日の流れを知り、不安を和らげる
- 生活スタイルに合わせた眼内レンズを選ぶ
- 手術後の回復の流れと注意点を理解する
- よくある質問を通じて不安を解消する
白内障手術は、現代医療において最も成功率の高い手術の一つです。適切な時期に適切な医療機関で受けることで、視力回復が期待できます。
幕張久木元眼科は、白内障の正確な診断、日帰り手術の実施、乱視矯正レンズの豊富な経験、術後ケアの手厚さを大切にしている、地域密着型の白内障治療クリニックです。
「最近視界がかすむ」「まぶしさが強くなった」「運転が不安になってきた」このような症状がある方は、一度受診をおすすめします。
あなたの目の状態をしっかり確認し、最適な治療タイミングやレンズ選びを丁寧にご案内します。見えにくさを我慢して生活する必要はありません。少しでも「おかしいな」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたの生活が、もう一度明るくクリアに戻るように。私たちが寄り添い、しっかりサポートいたします。
著者情報
幕張久木元眼科 院長 久木元 延行

経歴
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白内障・屈折矯正外来 主任
– 糖尿病網膜症専門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院
資格
日本眼科学会認定眼科専門医
水晶体嚢拡張リング認定医
難病指定医
ボトックス認定医(眼瞼痙攣、斜視)
光線力学療法認定医
所属学会
日本眼科学会
日本眼手術学会
日本白内障屈折矯正学会
日本網膜硝子体学会
日本糖尿病眼学会


