白内障を放置するリスクと進行速度〜早期発見の重要性
- 2025年7月28日
- 白内障
白内障とは〜見え方の変化と生活への影響
白内障は眼球の「水晶体」という組織が濁ってしまう病気です。水晶体はカメラでいうレンズの役割を担い、本来は透明な状態で光をきれいに透過・屈折させることで「物がよく見える」状態を作り出しています。この水晶体が濁ると、光がうまく通過できなくなり、視界がぼやけたり、まぶしく感じたりするようになります。
白内障という名前は、進行すると水晶体が真っ白になることに由来しています。初期段階では自覚症状がほとんどなく、徐々に進行していくため、気づいたときにはかなり進行していることもあります。
白内障は加齢によるものが最も一般的ですが、糖尿病やぶどう膜炎などの疾患、外傷、ステロイド薬の副作用、先天性のものなど、様々な原因で発症します。特に加齢による白内障は、80歳以上ではほぼ100%の方に見られるとされています。
白内障を治すためには手術しか方法がありません。進行を遅らせる目薬はありますが、完全に予防することはできないのです。
白内障の初期症状と進行速度
白内障の初期症状は比較的軽微で、気づきにくいことが特徴です。最初に現れる症状としては、「光をまぶしく感じる」「暗いところで見えにくい」などがあります。
特に夜間に信号や街灯、対向車のヘッドライトがまぶしく感じるようになると、運転時の安全性にも関わる重要な症状です。このような症状を感じたら、早めに眼科を受診することをお勧めします。
白内障の進行速度は個人差が大きく、一概には言えません。加齢による白内障は一般的に進行が遅く、数年かけてゆっくりと症状が進むことが多いです。
しかし、若年性の白内障や糖尿病に伴う白内障は比較的早く進行することがあります。特にステロイド薬による白内障は発症すると進行が早く、数ヶ月から1年程度で手術が必要になるほど視力が低下することもあります。
白内障の種類によっても進行の仕方は異なります。水晶体の後部が濁る「後嚢下白内障」は視力低下が早く進行しやすく、水晶体の中心にある核が濁る「核性白内障」はある程度進行するまで視力低下を自覚しにくいという特徴があります。
白内障を放置するとどうなるのか
白内障を放置すると、進行の速さには個人差がありますが、最終的には失明に至る可能性があります。しかし、医療が進んでいる日本では、白内障単独で失明する確率は約3%程度と低く、適切な時期に手術を受ければ視力を回復することができます。
世界的に見ると、白内障は失明原因の第1位(51%)となっていますが、これは医療アクセスの問題や経済的な理由から適切な治療を受けられない国や地域が多いためです。
白内障を放置することで生じる最も深刻なリスクの一つは、急性緑内障発作を引き起こす可能性があることです。白内障が進行して水晶体が膨らむと、眼の中の水の出口をふさいでしまい、眼圧が急激に上昇することがあります。緑内障は日本人の失明原因の第1位であり、白内障よりも失明リスクが高い病気です。
また、白内障が進行しすぎると、手術の難易度が上がり、合併症のリスクも高まります。さらに、白内障があると他の眼の病気(緑内障や加齢黄斑変性など)の発見や治療が遅れる可能性もあります。
白内障の症状が進行して日常生活に支障をきたすようになったら、手術を検討するタイミングです。
白内障手術の方法と効果
白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入する手術です。現在の白内障手術は医学の進歩により、2.4mm程度の極小切開で行われ、出血もほとんどなく比較的安全に行えるようになっています。
手術の流れとしては、まず角膜の周辺部に2〜3か所の小さな切開を行います。次に超音波の機械を使って濁った水晶体を破砕・吸引し、最後に人工の眼内レンズを挿入します。
手術時間は通常10分程度ですが、進行した症例では30分以上かかることもあります。手術は日帰りで行われることが一般的で、術後は医師の指示に従って目薬を点眼し、目を触らないよう注意する必要があります。
白内障手術で挿入する眼内レンズには大きく分けて2種類あります。単焦点レンズは見え方の質が最も良いものの、ピントを合わせられる距離が1か所のみで日常生活での眼鏡依存度が高くなります。多焦点レンズはピントを合わせられる距離が複数あり眼鏡依存度を減らせますが、見え方の質は単焦点より劣り、慣れるまで時間がかかるというデメリットがあります。
また、乱視がある方には乱視矯正可能な眼内レンズもあります。保険適用の乱視矯正レンズもあり、適応があれば積極的に使用することで術後の視力改善が期待できます。
白内障の早期発見の重要性
白内障は早期発見・早期治療で進行を遅らせることができます。また、適切な時期に手術を行うことで、視力を改善し、生活の質を向上させることができます。
白内障の早期発見のためには、定期的な眼科検診が重要です。特に40代以降は年に一度は眼科を受診し、目の健康状態をチェックすることをお勧めします。
以下のような症状を感じたら、白内障の可能性があるため、早めに眼科を受診しましょう。
- 光がまぶしく感じる(特に夜間の運転時)
- 暗いところで見えにくい
- 目がかすむ、ぼやける
- 視力が低下する
- ものが二重に見える
- 眼鏡やコンタクトレンズの度が合わなくなる
- 近くが見えやすくなった(老眼が改善したように感じる)
白内障は加齢に伴い誰にでも起こりうる病気ですが、早期に発見し適切な治療を受けることで、視力低下による生活の質の低下を防ぐことができます。
視力は私たちの生活の質に大きく関わる重要な要素です。「見えにくさ」を感じたら、我慢せずに専門医に相談することが、目の健康を守るための第一歩となります。
白内障の症状でお悩みの方は、ぜひ専門の眼科医院で相談してください。日帰り白内障手術や最新の眼内レンズなど、患者さん一人ひとりに合わせた治療法をご提案いたします。
詳細は幕張久木元クリニックまでお気軽にお問い合わせください。
著者情報
幕張久木元眼科 院長久木元 延行
獨協医科大学 医学部医学科卒業
東京医科歯科大学病院 臨床研修医
東京医科歯科大学 眼科学講座 入局
東京都立広尾病院 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
東京都立多摩総合医療センター 眼科
東京医科歯科大学病院 眼科
– 白內障 •屈折矯正外来 主任
-糖尿病網膜症專門外来
– 医療安全管理リスクマネージャー
幕張久木元眼科開院